こんにちは、湖舟です。
「ギター1本で始める音楽理論」、第4回からは前回までで紹介したコードに音をさらに追加した、「テンションコード」についてお話ししていきます。
このあたりから「コードの名前と押さえ方丸覚え」スタイルの人だと覚えるのが嫌になって挫折するコードなんじゃないかと思います。(偏見?)
先に言ってしまうと、テンションコードとはテンションノート(9度・11度・13度の音)を付与したコードを意味します。基本的な三和音(第2回を参照)に対して7度の音を付与(第3回を参照)することでコードの響きが豊かになりましたが、ここにさらにテンションノートを付け加えると、より一層複雑でバラエティ豊かな響きになり、一気にコードの表現力が増します。正確には、もとの和音に対して付け加えてもよいテンションノートと付け加えてはいけないテンションノートがあるのですが、一旦「9度・11度・13度がテンションノートになる」と理解しておいてください。
【ギター1本で始める音楽理論】第3回 セブンスコードで世界を広げる
「テンション」とは?
「テンション」を直訳すると「緊張」になります。テンションノートはその名の通りコードに緊張感を付与できる音というわけなのですが、「緊張感」とひとくちに言ってもその響きは様々です。爽やかな響き、浮遊感のある響き、複雑でお洒落な響きetc…(もちろん、コードを聴いた時に浮かぶイメージは人それぞれです)。
今回はテンションノート(9度・11度・13度)のうち、9度の音にフォーカスして、ナインスコード(とアドナインスコード)について紹介していきます。この辺りから、似たようなコードの名前が増えてきて丸暗記が苦しくなってきますが、「構成音」で考えればすぐに使えるようになるはず。頑張りましょう!
第3回で学べること
- 9度(ナインス)の音とは何か
- ナインスコードとアドナインスコードの違い
- 9度を付与することでできるコードの構成音と押さえ方
9度(ナインス)の音とは?
第1回「度数とコード」では、1~完全8度までの音名を紹介しており、9度についてこの連載ではまだ触れていなかったので、どのような音なのかについてまず解説します。
解説します、とはいっても結構簡単です。完全8度のさらにひとつ隣が9度というだけです。8度がルート(1度)の1オクターブ上なので、9度は2度の1オクターブ上ということになります。1度がドなら、9度はレになりますね。正確には長9度がレの音になるので、ここから半音下げれば短9度のレ♭、半音上げれば増9度のレ#になります。表記の際は、
短9度の音(1度がドの時レ♭)を付け足すなら ♭9
増9度の音(1度がドの時レ#)を付け足すなら #9
をそれぞれ書き加えることになります。
【重要】何に付け足したかで表記が変わる
9度がどのような音かについて解説したので、早速ナインスコードを作っていきたいのですが、先に重要な点をお話ししておきます。
それは、9度が四和音にくっつく場合と、三和音にくっつく場合があるということです。四和音というのは、要するにセブンスコードのことです(第3回を参照)。四和音にナインスを付与したものがナインスコードですが、コードの基本である三和音にそのままナインスを付与することもあり、こちらはadd9(アドナインス)コードと呼ばれます。細かいことはこれから話しますが、9度を追加するときに、「追加される前のコード」が何かによって表記・構成音が変わるということは頭に入れておいてください。
四和音+ナインス
まず四和音(セブンスコード)に9thの音を足していきます。セブンスコードの中にも、メジャーセブンスがあったりドミナントセブンスがあったりするので、ちょっとパターンが多くなりますが、一つ一つ解説していきます。
9(ナインス)はドミナントセブンス+ナインス
「C9(Cナインス)」のように、アルファベットに9がくっついているだけのコードネームの意味について説明します。「C9」とだけ書かれていると、どういうコードなのか分かりにくいですが、これはCドミナントセブンスに9度を加えたという意味です。Cドミナントセブンス(C7)の構成音がド・ミ・ソ・シ♭でしたから、C9の構成音はド・ミ・ソ・シ♭・レとなります。C9というシンプルな表記なのに五和音というのが混乱を招きがちなところなので気を付けましょう。ドミナントセブンスにナインスを加えているので、「C7(9)」という表記も可能です。この書き方もよく見かけます。
実際に押さえてみると上のようになります。オシャレなロックでよく出てきそうな感じの響きですね。3,2,1弦の3フレットはまとめて薬指で抑えるので、最初は押さえにくいかもしれません。その際は、1弦3フレット(ソ)を省略して小指まで使う下のようなフォームでもOKです。
M9(メジャーナインス)はメジャーセブンス+ナインス
「CM9(Cメジャーナインス)」のような表記の場合は、CM7(Cメジャーセブンス)に9度を加えていることになります。したがって構成音はド・ミ・ソ・シ・レになります。C9の時と同じように、「CM7(9)」と書くこともできます。
独特の浮遊感を持つコードで、よく使われるテンションコードです。上の押さえ方では5度の音が省略されているため、四和音になっていますが、本来は五和音です。
m9(マイナーナインス)はマイナーセブンス+ナインス
「Cm9(Cマイナーナインス)」のような表記がされている場合は、Cm7(Cマイナーナインス)に9度を加えていることになります。Cm7の構成音は、C7における3度の音を半音下げたド・ミ♭・ソ・シ♭なので、Cm9の構成音はド・ミ♭・ソ・シ♭・レになります。
こちらもジャンルを問わずわりとよく出てくるコードです。こちらも5度が省略された押さえ方になっています。
テンションノートを加えるだけで、コードの深みが増し、何ならそのままイントロに使えてしまいそうな響きになってきたことがわかると思います。
#9,♭9はドミナントセブンスのみに追加できる
ここまでで、3種類のセブンスコードに長9度を加えたので、#9(シャープナインス)や♭9(フラットナインス)も加えていきたいところなのですが、ここでルールが生じます。#9や♭9は、M7やm7には加えられず、ドミナントセブンスにのみ加えられます。つまり、C7(#9)やC7(♭9)は存在しますが、CM7(#9)やCm7(♭9)のようなコードは使えません。不協和音になってしまいます。あえて不協和音を使うような音楽でなければ、使うことはないと思いますので、C7(#9)とC7(♭9)の押さえ方だけ紹介しておきます。
かなり緊張感のある響きになりました。7(#9)、特にE7(#9)はジミ・ヘンドリックスがよく使っていたことから、「ジミヘンコード」と呼ばれたりもします。うまく使えば曲中の良いアクセントになるコードです。
三和音+ナインス (add9コード)
続いて、三和音に9度を加えたコード、add9(アドナインス)コードについて解説していきます。「add9」という表記は、1,3,5度からなる基本的な三和音に9度の音を加えていることを意味しており、7度は含まれません。「C9」と「Cadd9」だと、一見C9の方がシンプルなコードに見えますが、C9は五和音でCadd9は四和音なので、実はCadd9の方が構成音は少ないということです。具体的な例を見ていきましょう。
add9(アドナインス)はメジャーコード+ナインス
「Cadd9(Cアドナインス)」のような表記がされている場合、これはCメジャー(C)に9度を加えていることになります。よって構成音はド・ミ・ソ・レになります。
m(add9)(マイナーアドナインス)はマイナーコード+ナインス
「Cm(add9)(Cマイナーアドナインス)」のような表記の場合は、Cmに9度を加えているので、構成音はド・ミ♭・ソ・レになります。
マイナーアドナインスに関しては、ポジションによっては濁って聞こえてしまうこともあるので注意が必要です。あまり多用するコードではないので気にしなくても大丈夫ですが・・・。
簡単に押さえられるので、Em(add9)だけ紹介しておきます。
その他のadd9コード
#5(オーギュメントコード)、♭5などの三和音に9をつけて、例えばCaug(add9)やC(♭5)(add9)のようなコードを作ることも可能ですが、あまり使わないので押さえ方まで覚える必要はないと思います。Caug(add9)のようなコードを使うとしたら、構成音はド・ミ・ソ#・レになります。特にポップスでは、実際の楽曲中で使われるのは、メジャーコードにナインスを足したシンプルなアドナインスコードがほとんどです。
add9はわりと大雑把でOK
add9コードを弾く時、ギターの構造上、ちょうど9度の音が押さえられないことも多いので、そういう時は1オクターブ下の2度の音や1オクターブ上の16度の音を代わりに使うことになりますが、これらをわざわざ「add2」とか「add16」などと呼ぶ必要はないので(Cadd2みたいに表記されることもまれにありますが)、「ルートがドなら、レを足せばオクターブ関係なくadd9になる」くらいの認識で大丈夫です。
おわりに
今回はテンションノートのうち、9度の音を使ってできるコード(ナインスコード・アドナインスコード)について解説しました。テンションノートがコードに彩りを与える様を感じ取ってもらえたら嬉しいです。
この辺りまで覚えられると、だいぶコードに慣れてきた気がしませんか?次回は残ったテンションノートである、11度と13度を使ったコードについてお話していきます。
それでは!